
平屋の間取りで、意外と面積を取ってしまうのが廊下です。個室を並べると、それぞれの扉へたどり着くための通路が必要になり、30坪前後の平屋ではその数帖が個室やLDKを圧迫します。
今回ご紹介するのは、南道路に面した83坪の変形地に計画した、延床30.0坪(99.37㎡)・3LDKの平屋です。個室と水廻りを北側に一列に並べ、その前に東西に長い廊下を通しました。そして、廊下とLDKの間の壁を、廊下側からもLDK側からも使える収納にしています。廊下を「通るだけの場所」にしないことで、南側のほぼ全幅を21.75帖のLDKに充てたプランです。
この記事では、図面の寸法と家具の配置をもとに、収納壁の中身、LDKの居場所のつくり方、水廻りと玄関の関係、そしてこの構成と引き換えになっている点まで詳しく見ていきます。
この間取りの前提条件
- 敷地面積:83坪(分譲地内の変形地)
- 道路:南道路
- 階数:平屋
- 間取り:3LDK
- 延床面積:99.37㎡(30.0坪)
- 建物の外形:間口12,740mm×奥行き8,190mmの長方形
- LDK:21.75帖
- 主寝室:6帖(北西)
- 洋室:4.5帖×2室(北側中央)
- 水廻り:浴室1616サイズ、ランドリー3帖、廊下に面した洗面台
- トイレ:2か所(西端と浴室横)
- 収納:廊下とLDKの間の両面収納、LDK西側の収納、玄関の靴収納
- 外部:南側にタイルデッキ、駐車スペース4台
個室は6帖と4.5帖×2なので、夫婦と子ども2人程度の家族を当てはめやすい構成です。個室をコンパクトにまとめ、その分の面積を家族が集まるLDKに回しているのがこのプランの考え方です。
敷地と配置の考え方
敷地は北側の境界がほぼまっすぐで、南側の境界が斜めに振れ、南東側が張り出した形です。建物は北側の境界に沿わせた長方形とし、南側の斜めの境界との間に植栽帯を設け、張り出し部分と南西側に駐車スペースを計4台取っています。
建物の奥行きは8,190mmと、平屋30坪としては浅めです。奥行きを抑えた分、建物の南側には余白が生まれ、LDKの前にタイルデッキを設けたうえで、植栽帯までの距離も確保できています。奥行きの浅い建物は、南の光が部屋の奥まで届きやすいという利点もあります。
北から南へ、3つの帯で構成する
この間取りは、北から順に次の3つの帯でできています。
- 北の帯(奥行き2,730mm):主寝室、洋室2室、浴室・トイレ、ランドリー
- 中央の帯(廊下と収納壁を合わせて1,820mm前後):東西に通る廊下と、両面使いの収納
- 南の帯(奥行き約3,640mm):LDK21.75帖
北の帯の幅は、西から主寝室3,640mm、洋室2,730mm、洋室2,730mm、浴室・トイレ1,820mm、ランドリー1,820mmと、間口12,740mmを5つに割っています。すべての個室が北側の外壁に面し、北側に窓を設けているのが特徴です(主寝室は西側にも窓があります)。
北向きの部屋は直射日光が入りにくい代わりに、一日を通して明るさが安定しやすく、夏の強い日射による室温の上昇も受けにくくなります。寝室や子ども部屋は日中に長く過ごす場所ではないため、日当たりの良い南面は家族の時間に充てる、という割り切りです。
収納壁の中身を読み解く
このプランの中心にあるのが、廊下とLDKの間に東西に伸びる収納壁です。図面を見ると、この壁は表と裏でまったく違う役割を持っています。
廊下側は衣類を掛ける収納
廊下側には、ハンガーパイプの描かれた収納が複数区画並んでいます。洋室2室には室内にクローゼットが描かれていないため、子どもの衣類はこの廊下側の収納にまとめる想定と読めます。各部屋の扉の正面に衣類の収納があるので、着替えるときは扉を出てすぐ手が届く距離です。
個室にクローゼットを設けないと、4.5帖の部屋でもベッドと机を置く壁を確保しやすくなります。収納を廊下にまとめることで、小さめの個室でも家具の配置に余裕が生まれます。
LDK側はカップボードとデスク
LDK側は、西から順にカップボード(CB)、扉付きの収納、椅子を置いたデスクカウンター、扉付きの収納と並びます。カップボードはキッチンの真後ろにあたり、振り返れば食器や家電に手が届く位置です。
デスクカウンターはソファとキッチンの中間にあり、子どもの宿題や在宅ワーク、家計簿をつける場所として使えます。キッチンに立つ人から見える位置なので、子どもが勉強している様子を見守りやすく、個室にこもらずに作業できる居場所になります。一方で、テレビの音や料理の音が届く場所でもあるため、集中したい作業には向かないこともあります。
両面収納の奥行きの考え方
両面から使う収納壁では、片側の奥行きを深くすると反対側が浅くなります。衣類を掛ける収納にはハンガーの幅として550〜600mm前後の奥行きがあると使いやすく、カップボードや本棚は450mm前後でも十分なことが多いです。どちら側に何をしまうかを先に決め、奥行きの配分を決めることが、この形の収納を使いやすくするポイントです。
LDK21.75帖の居場所のつくり方
キッチンとダイニングを横に並べる
LDKの西寄りには、コンロとシンクを備えたキッチンカウンターがあり、その東端にダイニングテーブルがつながっています。キッチンとダイニングを横一列に並べると、配膳や片付けのときに体の向きを変えるだけで済み、テーブルを拭いたり食器を下げたりする動きが短くなります。
この並べ方は、通路を兼ねる部分が少ないため、同じ面積でもLDKが広く感じられるのも利点です。その一方で、キッチンの手元がダイニング側から見えやすいので、作業中の散らかりが目に入りやすい点は理解しておきたいところです。
窓際の2脚と、東側のソファ
キッチンの南側、窓際にはラウンジチェアが2脚描かれています。ダイニングでもソファでもない、窓の外を眺めながら座るための場所です。タイルデッキと植栽が目の前にあり、コーヒーを飲んだり本を読んだりする小さな居場所になります。
東側にはL型のソファがあり、テレビボードは玄関ホールとの間の東側の壁に置かれています。テレビを東の壁に向けることで、南の窓からの光が画面に映り込みにくく、窓の前を家具でふさがずに済みます。キッチン、窓際、ソファ、デスクと、LDKの中に性格の違う居場所が4つあり、家族が同じ空間にいながら別々のことをしやすい構成です。
南面いっぱいの窓とタイルデッキ
LDKの南側の壁には、柱を挟んで窓が連続して描かれており、その外にタイルデッキがあります。室内の床と外のデッキが近い高さでつながると、窓を開けたときに室内が外へ広がったように感じられます。
南面の大きな窓は冬の日射を取り込める反面、夏は日射が入りすぎることがあります。軒や庇の出を確保する、外付けのシェードを使えるようにしておくなど、季節ごとの日射の調整を設計段階で検討しておくことが大切です。
西側のパントリーと冷蔵庫置場
LDKの西端の壁には奥行きのある収納があり、食品や日用品のストックをまとめるパントリーとして使えます。その北隣、廊下の西端に近い位置には冷蔵庫置場がくぼみとして設けられています。冷蔵庫を壁のくぼみに納めると、LDKから見たときに家電の側面が目立ちにくくなります。
冷蔵庫はキッチンの西側にあたり、廊下からも近い位置です。家族が飲み物を取りに来ても、キッチンカウンターの内側に入り込まずに済むため、調理中の人と動線が重なりにくい配置です。
廊下の両端がLDKにつながる回遊動線
東西に伸びる廊下は、西端でキッチン側へ、東端で玄関ホールへつながり、玄関ホールからはLDKへ入れます。つまり、LDK → 玄関ホール → 廊下 → キッチン → LDKと一周できる動線です。
帰宅したらホールから廊下へ進み、洗面台で手を洗い、廊下側の収納に上着を掛けて、西端からキッチンへ。買い物袋を持ったまま冷蔵庫やパントリーにたどり着ける流れです。子ども部屋へもホールから廊下を通って向かえるため、LDKを通らずに自室へ行くこともできます。
水廻りと2つのトイレ
北東の角には浴室(1616サイズ)とランドリー(3帖)が並びます。ランドリーには洗濯機置場と東側の壁に沿ったカウンターがあり、洗う・干す・たたむを一室で行えます。洗面台はランドリーの中ではなく、その南側、廊下の東端に独立して置かれているため、入浴中でもほかの家族が洗面台を使えます。
トイレは浴室横の1か所と、廊下の西端、主寝室の南側に手洗いカウンター付きの1か所があります。玄関から近いのは東側のトイレ、LDKや主寝室から近いのは西側のトイレと、建物の両端に分かれているので、朝の時間帯の重なりを和らげられます。
注意点・弱点
個室が横並びで隣り合う
主寝室と洋室、洋室同士が壁一枚で並ぶため、生活音が伝わりやすい配置です。平屋では、個室の間に収納を挟む、間仕切り壁に吸音材を入れるといった配慮で、音の伝わり方をやわらげることができます。就寝時間が大きく異なる家族では、特に意識しておきたい点です。
洗濯物は各部屋へ運ぶ流れになる
衣類をまとめてしまう大きな部屋はないため、乾いた洗濯物は廊下側の収納や主寝室のクローゼットへ分けて運ぶことになります。ランドリーは廊下の東端、主寝室は西端にあるため、主寝室までは廊下を端から端まで歩く距離です。
4.5帖の個室は家具の置き方が限られる
4.5帖はシングルベッドと机を置くと、残る床は多くありません。廊下側の収納に衣類を逃がす前提で考えるとともに、窓と扉の位置から、ベッドと机をどの壁に置くかを図面上で確かめておくことが大切です。
廊下の幅と収納扉の開き方
廊下に収納が面していると、収納の扉を開けたときに通路をふさぐことがあります。引戸や扉のないオープンな収納にする、扉の幅を小さく分割するなど、廊下の幅と扉の開き方をセットで考える必要があります。
アレンジするならこんな選択肢
仮に洋室2室の間に収納を設けると、音の問題はやわらぎますが、各室は4.5帖より小さくなるか、建物の間口を広げる必要があります。主寝室と洋室の間に収納を挟む方が、子ども部屋の広さを保ったまま音の配慮がしやすいかもしれません。
デスクカウンターを延長して2人並んで使える長さにすれば、子ども2人が同時に勉強できる場所になります。その代わり、LDK側の扉付き収納は減ります。何をLDKにしまい、何を廊下側にしまうかで、カウンターと収納の割合は調整できます。
この間取りが向いている方
- 個室よりLDKの広さを優先したい方
- 南面の光を家族の時間に使い切りたい方
- LDKの中にデスクや窓際の椅子など、複数の居場所がほしい方
- 子どもがLDKを通らずに自室へ行ける動線も確保したい方
- 廊下の面積を無駄にしたくない方
反対に、個室を広く取りたい方や、家族の衣類を1か所にまとめて管理したい方、寝室同士の音を特に気にされる方には、別の配置の方が合う可能性があります。
同じ敷地で描いた別案もあります
同じ83坪の変形地で、中央に5帖のWICを置き、主寝室と子ども部屋をLDKの両側に振り分けた別案も描いています。詳しくは中央WICとタタミコーナーのあるプランをご覧ください。
まとめ
83坪の変形地に、奥行き8,190mmの長方形の平屋を置き、北側に個室と水廻りを一列に並べたプランです。個室の前に通した廊下とLDKの間の壁を、廊下側は衣類の収納、LDK側はカップボードとデスクという両面の収納にすることで、廊下に役割を持たせながら、南側の全幅を21.75帖のLDKに使っています。
LDKにはキッチンとダイニングの横並び、窓際の椅子、ソファ、デスクと性格の違う居場所があり、廊下の両端がLDKにつながる回遊動線も備えています。その一方で、個室が隣り合うことによる音の問題や、4.5帖の個室の家具配置、洗濯物を各所へ運ぶ手間といった引き換えもあります。LDKを優先するか、個室を優先するか。ご家族の暮らし方に当てはめて考える材料にしていただければ幸いです。
※本記事は一つの設計例です。敷地条件、法規、構造、周辺環境、家族の暮らし方により適切な計画は異なります。
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