
平屋を建てるなら、庭に向かって大きな窓を開き、外とのつながりを感じながら暮らしたい。そう考える一方で、道路や駐車場から室内が見えてしまい、結局カーテンを閉めたままになるのではと心配される方も少なくありません。平屋は床の高さが道路に近いため、2階建て以上に視線の配慮が必要になります。
今回ご紹介するのは、121坪・東道路の敷地に計画した、延床31.25坪(103.51㎡)の3LDKの平屋です。建物をL字型に配置し、道路側に寝室とWICの棟を立てることで、南側の庭とタイルデッキを道路から見えにくくしています。
この記事では、L字の向きをどう決めたのか、22帖のLDKとタタミコーナーの関係、玄関まわりにまとめた水廻りの動線などを図面にもとづいて解説します。あわせて、寝室と子ども部屋が離れていることなど、この配置ならではの注意点もお伝えします。
この間取りの前提条件
- 敷地面積:121坪(東道路)
- 階数:平屋
- 間取り:3LDK
- 延床面積:31.25坪(103.51㎡)
- 建物の外形:東西約15.47m、南北は最大約10.92mのL字型
- LDK:22.0帖+タタミコーナー3.0帖
- 個室:寝室6.0帖、洋室4.5帖×2室
- 水廻り:洗面・脱衣室2.0帖、システムバス1616、独立洗面、トイレ2か所(1.5帖・約1.1帖)
- 主な収納:WIC3.0帖、玄関横の収納、各洋室のクローゼット、カップボード
- 外部:タイルデッキ、植栽、駐車スペース4台分
敷地は121坪とゆとりがありますが、建物は31.25坪に抑え、残りを駐車スペースと庭に充てています。広い敷地ほど建物を大きくしたくなりますが、本計画では「庭をどう守るか」を建物の形で解決することを優先しています。
東道路の敷地をどう読むか
東道路の敷地は、玄関や駐車スペースを東側にまとめ、LDKや庭を南側に取りやすいのが一般的な特徴です。南道路のように庭が道路に直接面することがないため、もともとプライバシーを確保しやすい条件でもあります。
ただし、南側の庭が東の道路や駐車スペースに向かって開いていると、斜め方向から庭やLDKが見えてしまいます。特に駐車スペースは人が乗り降りし、立ち止まる場所なので、庭との間に何もないと落ち着かない原因になります。
本計画では、道路沿いの東側に4台分の駐車スペースを並べ、P1とP2の間から玄関ポーチへ向かうアプローチを設けています。そのうえで、駐車スペースのすぐ西側に寝室とWICの棟を南へ伸ばし、この棟を庭と駐車スペースの間の「壁」として使っています。
庭を囲むL字型の配置

建物は、北側に東西に長い棟、東側に南へ伸びる棟を組み合わせたL字型です。北側の棟には、西から洋室2室、タタミコーナーを含むLDK、水廻り、玄関が一列に並びます。東側の棟には、玄関の南にWIC(3.0帖)と寝室(6.0帖)が続きます。
L字の内側にあたるLDKの南には、図面上で幅約7.3m・奥行き2m強のタイルデッキを設け、その先に植栽を配置しています。庭から見ると、北はLDK、東は寝室の棟に囲まれ、道路や駐車スペースの方向には建物の壁が立っている状態です。建物そのものが目隠しになるため、高い塀を道路側に巡らせなくても、カーテンを開けて過ごしやすい庭になります。
仮にL字を反転させ、縦の棟を西側に伸ばした場合、西の隣地側は守られますが、東の駐車スペース側に庭が開いてしまいます。また、建物を東西に長い長方形にしただけでも、庭の東側が駐車スペースとつながります。道路と駐車スペースのある東側に棟を立てることが、この敷地では視線対策として理にかなった選択です。
南のタイルデッキに開く22帖のLDK
LDKは22.0帖で、南面をタイルデッキに向けて開いています。キッチンはLDKの北東寄りにあり、シンクとIHコンロを並べたカウンターに立つと、正面に南の庭とデッキが見える向きです。北側の壁際には背面収納(カップボード)を設け、冷蔵庫はLDKの北東の角に納めています。
キッチンの南側には丸いダイニングテーブル(4人掛け)、その西側にリビングを配置しています。リビングのL字型ソファは西の壁を向き、壁際にテレビボードを置く計画です。テレビを南の窓際に置かないことで、デッキ側の窓の前を空け、庭への出入りや眺めを妨げないようにしています。ダイニングとリビングの間には細長いカウンター状の家具も描かれており、食事以外の作業にも使える場所になりそうです。
タイルデッキは室内の床から続く「もう一つの部屋」として使えます。洗濯物を干したり、子どもが遊んだり、休日に椅子を出して過ごしたりと、LDKの延長として外を使えるのが、庭を守る配置にした一番のメリットです。南向きのデッキは日当たりが良い反面、夏はタイルが熱を持ちやすいため、軒の出やシェード、植栽による日除けもあわせて計画しておくと快適さが増します。
LDKの北側に設けたタタミコーナー
LDKの北西側、キッチンの西隣に3.0帖のタタミコーナーがあります。壁で仕切らず、リビングとダイニングの両方から見える位置です。タタミコーナーの隣には小さな収納も設けています。
使い方は暮らしに合わせて変えられます。
- 小さなお子さまの昼寝やおむつ替えの場所
- 洗濯物を畳むなどの家事スペース
- 来客が泊まるときの簡易的な寝床
- リビングとは別に、横になってくつろぐ場所
キッチンのすぐ隣にあるため、調理をしながらタタミコーナーで遊ぶお子さまの様子を見守りやすい位置関係です。一方、北側に位置するため、南のデッキ側に比べると直射日光は入りにくくなります。日中に明るさが欲しい場合は、北側の窓の大きさや位置を検討するとよいでしょう。北側の光は時間帯による変化が少なく、落ち着いた明るさになりやすいという良さもあります。
水廻りを玄関の近くにまとめる
水廻りは建物の北東、玄関の近くに集めています。玄関ホールに面して独立洗面とトイレ(1.5帖)があり、その北側に洗面・脱衣室(2.0帖)とシステムバス(1616サイズ)が並びます。
帰宅したら玄関からホールに上がってすぐに手を洗い、そのままLDKへ入れる動線です。外遊びのあとの手洗いや、汚れた服のまま浴室へ直行したいときにも、LDKを通らずに済みます。来客がトイレや洗面を使うときも、家族のくつろぐLDKの中を通らずに案内できます。
洗面・脱衣室はキッチン側にも出入口があり、キッチンから直接行き来できます。キッチン、洗面・脱衣室、ホール、LDKがひと回りでつながる回遊動線になっているため、料理の合間に洗濯機を回す、入浴中の子どもの様子を見に行くといった動きが短い距離で済みます。洗面と脱衣室を分けているので、誰かが入浴中でも、ほかの家族が気兼ねなく洗面を使えるのも利点です。
寝室・WICと洋室2室の配置
寝室(6.0帖)は建物の南東、東側の棟の一番奥にあり、図面ではシングルベッドを2台並べる想定です。寝室の手前にWIC(3.0帖)、さらに玄関側に収納があり、玄関から寝室までの廊下沿いに収納が続きます。帰宅してコートや鞄をしまい、そのまま寝室へ向かう流れをつくりやすい配置です。
洋室(4.5帖)は建物の西側に2室並び、それぞれクローゼットを備えています。洋室の前の小さなホールにはトイレ(約1.1帖)があり、LDKとはこのホールを介してつながります。お子さまの部屋として使う場合、LDKを通って自室へ向かうため、帰宅時や外出時に顔を合わせやすい関係になります。
寝室と洋室はLDKをはさんで東西に分かれているため、それぞれの音が伝わりにくく、お子さまが成長したあとはお互いのプライバシーを保ちやすい配置です。トイレも東西に1か所ずつあるため、朝の混雑を分散できます。
注意点・デメリット
小さなお子さまのうちは寝室と子ども部屋が遠い
寝室は南東、洋室は西側にあり、間にLDKがはさまります。お子さまが成長すれば良い距離感になりますが、夜泣きの時期や、一人で寝始めたばかりの頃は様子を見に行く距離が長くなります。その時期は寝室で一緒に寝る、タタミコーナーを寝る場所として使うなど、時期に合わせた使い方を考えておくとよいでしょう。
寝室が駐車スペースに近い
寝室の東側は駐車スペースに面しています。早朝や深夜の車の出入りがある場合、エンジン音やドアの開閉音、ヘッドライトの光が気になることがあります。寝室の東面の窓は大きさと位置を絞る、遮光性の高いカーテンを使う、駐車スペースとの間に植栽を入れるなどの配慮が有効です。
洋室4.5帖はコンパクト
洋室はそれぞれ4.5帖です。ベッドと机を置くと、残りの床は多くありません。LDKやタタミコーナーを家族の居場所として広く取る代わりに、個室は寝る・勉強する場所と割り切った面積配分です。大きな家具を置きたい場合は、事前に配置を確認しておく必要があります。
西側と南側の視線は外構で調整が必要
L字の棟が守るのは主に東側と北側です。庭の西側と南側は隣地に向かって開いているため、隣地の建物の窓の位置や、将来建物が建つ可能性によっては、植栽やフェンスで視線を調整する必要があります。図面でも敷地の南西の角や、デッキの前に植栽を配置しています。
東西に長い平屋は外周と屋根が大きくなる
建物の東西は約15.47mあり、L字の形状と合わせて外壁や屋根、基礎の面積は大きくなりがちです。同じ床面積の総2階建てやシンプルな長方形の平屋に比べ、建築費が上がる場合があります。
ほかの配置との比較
寝室を洋室の隣に移す案
寝室を西側の洋室の並びに移し、家族の寝る場所をひとまとめにする案です。小さなお子さまがいる時期は安心感がありますが、東側の棟がWICだけになると、庭を守る「壁」の長さが足りなくなります。その場合は、東側に収納や趣味室を置く、あるいは木塀を設けるなど、別の方法で駐車スペース側の視線を遮る必要があります。
タタミコーナーを個室にする案
タタミコーナーを壁と建具で仕切り、来客用の和室にする案も考えられます。客間としての独立性は高まりますが、LDKとのつながりは弱くなり、普段の見守りや家事スペースとしての使いやすさは下がります。来客が泊まる頻度と、日常の使い方のどちらを優先するかで判断する部分です。
駐車スペースを北側にまとめる案
敷地にゆとりがあれば、駐車スペースを北東側に寄せ、寝室の前を庭や植栽にする案もあります。寝室への車の音や光の影響は減りますが、アプローチや駐車スペースの配置が変わり、玄関までの距離や外構の範囲にも影響します。敷地全体の形と道路の幅を見ながら検討します。
この間取りが合う方
- 東道路や角地など、道路や駐車スペースからの視線が気になる敷地の方
- カーテンを開けたまま庭とつながるLDKで過ごしたい方
- LDKの一角にタタミのくつろぎスペースがほしい方
- 帰宅後すぐに手洗いができる動線を重視する方
- 親の寝室と子ども部屋を離して、お互いの時間を大切にしたい方
- 敷地内に複数台の車を停めたい方
この間取りが合わない可能性がある方
- 寝室と子ども部屋を隣り合わせにしたい方
- 個室にはそれぞれ6帖以上の広さがほしい方
- 建築費を優先して建物の形をシンプルにしたい方
- 庭の手入れやデッキの管理に手間をかけたくない方
まとめ
今回の住まいは、121坪・東道路の敷地に計画した、延床31.25坪の3LDKの平屋です。道路沿いに4台分の駐車スペースを並べ、そのすぐ内側に寝室とWICの棟を立ててL字をつくることで、南側の庭とタイルデッキを道路や駐車スペースから見えにくくしています。
22帖のLDKは南のデッキに開き、北側にはキッチンの隣にタタミコーナーを設けました。水廻りは玄関の近くにまとめ、キッチンから洗面・脱衣室へ直接行き来できる回遊動線としています。
寝室と子ども部屋が離れていること、寝室が駐車スペースに近いこと、庭の西側と南側は外構での調整が必要なことなど、注意しておきたい点もあります。建物の形そのものを目隠しとして使う考え方は、敷地にゆとりがある平屋だからこそ取りやすい方法です。どの方向から見られやすいかを敷地で確かめたうえで、L字の向きを決めることが大切です。
※本記事は一つの設計例です。敷地条件、法規、構造、周辺環境、家族の暮らし方により適切な計画は異なります。
コメント