
親との同居を考えるとき、多くの方が気にされるのが「一緒に暮らす安心感」と「お互いの生活リズムを崩さないこと」をどう両立するかです。部屋数を増やすだけでは、朝の身支度や来客、夜の物音などで、どちらかが気をつかう暮らしになってしまうことがあります。
今回ご紹介するのは、97坪・西道路の敷地に計画した、延床36.0坪(119.24㎡)の4LDKの平屋です。お父様との同居を前提に、玄関・LDK・浴室は共用としながら、お父様の部屋は玄関のすぐ横に、子世帯の寝室や個室は建物の東側にまとめています。
建物はL字型に配置し、LDKの南側には木塀とウッドデッキで囲われた庭を設けました。この記事では、「なぜこの位置にお父様の部屋を置いたのか」「L字と木塀で何を守っているのか」を解説し、あわせてこの配置の弱点や、別の配置にした場合の考え方もお伝えします。
この間取りの前提条件
- 想定:お父様と子世帯の同居(玄関・LDK・浴室は共用)
- 敷地面積:97坪(西道路)
- 階数:平屋
- 間取り:4LDK
- 延床面積:36.0坪(119.24㎡)
- 建物の外形:約14.56m×10.92mのL字型
- LDK:20.25帖(板張りの勾配天井)
- 個室:お父様の部屋5.5帖、主寝室6.75帖、洋室5帖×2室
- 水廻り:洗濯・脱衣室3帖、ユニットバス1621、独立洗面台、トイレ2か所
- 主な収納:シューズクローク、パントリー2帖、カップボード、本棚、WIC4.5帖
- 外部:ウッドデッキ、木塀、駐車スペース(図面上は5台分)
36坪は、平屋の4LDKとしては標準的からややゆとりのある広さです。ただし二世帯で使う場合、個室の数だけでなく「誰がどの順番で、どこを通るか」を整理しないと、同じ面積でも窮屈に感じやすくなります。本計画では、面積の配分よりも部屋同士の位置関係に重点を置いています。
敷地と建物配置の考え方
敷地は西側で道路に接しています。図面では、道路沿いの南西側にまとまった駐車スペースを確保し、建物は北側へ寄せて配置しています。道路に面する西側には、玄関とお父様の部屋がある構成です。
建物の北側には、西から順にお父様の部屋、LDK、パントリー、主寝室が一列に並びます。そこから東側だけが南へ伸び、水廻りと5帖の洋室2室が入っています。この「北側の横長の棟」と「東側の縦の棟」でL字をつくり、その内側の角にあたるLDKの南側を庭にしています。
西道路の敷地では、道路側に庭をつくると通行する人や車から庭が見えやすく、南側に大きな窓を設けても落ち着いて使いにくい場合があります。本計画では庭を道路から離れた敷地の奥側に置き、駐車スペースとの間には木塀を立てています。北はLDK、東は洋室の棟、西は木塀に囲まれ、開いているのは南側だけという庭のつくり方です。
L字配置と木塀で「囲われた庭」をつくる

LDKの南側には、図面上で幅約3.6m・奥行き約1.8mほどのウッドデッキが描かれています。デッキの西側には木塀が南へ伸びていて、その手前に植栽を配置しています。駐車スペースや道路の方向からデッキが直接見えにくくなり、LDKから庭へ出たときにも、車の出入りが視界に入りにくい構成です。
デッキの東側は、トイレと洗面台、洋室が入る東側の棟です。建物そのものが庭の東側の壁になるため、塀だけで囲う場合よりも外構の範囲を小さくできます。L字の内側は、二方向を建物で守られた落ち着きのある外部空間になりやすいのが特徴です。
仮に建物を北側に長方形で置いただけだと、庭の西側は駐車スペースと道路に直接開いてしまいます。反対に、L字の向きを変えて縦の棟を西側に置くと、道路側の視線は防ぎやすくなりますが、玄関と駐車スペースの距離が離れたり、お父様の部屋を玄関の横に置きにくくなったりします。東側に棟を伸ばし、西側は木塀で補う今回の形は、道路との関係と室内の動きの両方を考えた折り合いといえます。
南北に開く20.25帖のLDK
LDKは20.25帖で、北側の窓際にダイニング、南側のデッキ寄りにリビングを配置しています。図面のダイニングテーブルは片側3脚ずつの6人掛けで、お父様と子世帯が一緒に食事をしても、来客があっても対応しやすい大きさです。
キッチンはLDKの東側にあり、西を向いて立つ対面型です。シンクとIHコンロを一つのカウンターにまとめ、背面にはカップボードを設けています。キッチンから見たパースでは、正面の壁にテレビ、その手前にソファ、左手にデッキへつながる大きな窓、右手にダイニングが見えます。調理をしながら、リビングにいる家族やお父様の様子を自然に見渡せる位置関係です。
LDKには南のデッキ側だけでなく、北側にも窓を設けています。南からは日差しを、北からは時間帯による変化の少ない安定した光を取り込み、窓を開ければ南北に風が抜けます。平屋は建物の奥行きが深くなると中央部が暗くなりやすいため、両面から光を入れる考え方は有効です。
パースでは天井を板張りの勾配天井としています。床面積を増やさずに縦方向へ広がりが生まれ、二世帯が集まるLDKでも圧迫感を抑えやすくなります。一方で、空間の容積が大きくなるため、空調機の能力や位置、断熱・気密性能、照明の交換方法まで一体で検討することが大切です。
お父様の部屋を玄関の横に置いた理由
お父様の部屋(図面のFBR)は5.5帖で、建物の北西の角にあります。玄関・シューズクロークからホールを少し進んだ位置にあり、部屋の隣には約1.3帖のトイレ、部屋の中にはクローゼットを設けています。
この配置の一番の意図は、お父様が自分のペースで外出・帰宅できることです。部屋から玄関までは、LDKを通らずにホールだけで行き来できます。子世帯が食事中でも、来客中でも、気兼ねなく出かけられます。
反対に子世帯は、帰宅すると玄関からホールを通ってLDKへ入ります。その途中にお父様の部屋の入口があるため、明かりがついている、テレビの音がするといった気配を、わざわざ声をかけなくても感じ取れます。完全に分けるのではなく、日々の動きの中でゆるやかに様子がわかる距離感です。
部屋の隣のトイレは約1.3帖と、一般的な1帖のトイレより少しゆとりを持たせています。将来、手すりを付けたり、介助が必要になったりしたときにも対応しやすい広さです。夜中にトイレへ行くときも、廊下を長く歩かずに済みます。玄関にも近いため、外出前後や来客時のトイレとしても使えます。
子世帯のプライベートゾーンは東側にまとめる
子世帯の部屋は、LDKをはさんだ東側に集めています。北東に6.75帖の主寝室があり、図面ではダブルサイズのベッドを2台並べる想定です。その南に4.5帖のWIC、さらに南の東側の棟に5帖の洋室が2室並び、それぞれにクローゼットがあります。
お父様の部屋と子世帯の部屋の間にはLDKがあり、建物の西端と東端に分かれています。お子さまの声や夜遅い時間の物音がお父様の部屋に届きにくく、逆にお父様のテレビの音なども子世帯の寝室には伝わりにくい位置関係です。
洋室2室の近くには、もう一つのトイレ(1帖)と独立洗面台を設けています。洗濯・脱衣室の洗面とは別に洗面台があることで、朝の身支度が重なる時間帯でも、歯みがきや身だしなみと入浴・洗濯を分けて使えます。トイレが西と東に1か所ずつあるため、お父様と子世帯が同じトイレを取り合うことも少なくなります。
キッチンを中心にした回遊動線と洗濯の流れ
キッチンの北側と南側にはそれぞれ通路があり、どちらからも東側のプライベートゾーンへ抜けられます。北側の通路は主寝室の入口へ、南側の通路は洗面台・トイレや洋室へつながり、その2本をWICと洗濯・脱衣室の前を通る東側の廊下が結んでいます。キッチンとカップボードのまわりをぐるりと回れる構成です。
キッチンの北側にはパントリー(2帖)があり、冷蔵庫もパントリーの中に置く計画です。冷蔵庫をLDKから見えにくい位置に納めることで、リビングから見たキッチンまわりがすっきりします。パントリーの隣には本棚も設けています。
洗濯・脱衣室は3帖で、洗濯機の上部にはガス衣類乾燥機(図面では「乾太くん」と記載)を設置する計画です。カウンターもあり、乾いた衣類をその場で畳めます。隣は4.5帖のWICで、「洗う・乾かす・畳む・しまう」が数歩の範囲で完結します。外に干さない洗濯スタイルであれば、天候や時間帯に左右されにくくなります。
なお、ガス衣類乾燥機を採用する場合は、ガスの配管と排湿管を外壁へ出す経路が必要です。設置位置は外壁側に近いほうが計画しやすく、本計画でも洗濯機は建物の外周側に配置しています。
収納は「使う場所のそば」に分散する
収納は一か所に集めず、物を使う場所の近くに配置しています。主な収納と使い方の想定は次のとおりです。
| 場所 | 収納 | 主な用途の例 |
|---|---|---|
| 玄関 | シューズクローク | 靴、傘、外出用品、お父様の杖や外履き |
| お父様の部屋 | クローゼット | 衣類、寝具、身の回りの物 |
| キッチン | パントリー2帖・カップボード | 食品ストック、冷蔵庫、食器、家電 |
| パントリー横 | 本棚 | 本、書類、家族の共有物 |
| 主寝室横 | WIC4.5帖 | 子世帯の衣類、洗濯後の衣類 |
| 浴室横 | 収納 | タオル、洗剤などのストック |
| 洋室 | クローゼット各1か所 | 個人の衣類や持ち物 |
二世帯で暮らすと、どうしても物の量は増えます。共用の収納と各世帯の収納を分けておくと、「どちらの物か分からない物」が共有スペースに残りにくくなります。お父様の物はお父様の部屋と玄関まわり、子世帯の物は東側、共有の物はキッチンまわりと考えると整理しやすい配置です。
駐車スペースと玄関の関係
図面では、道路沿いに縦に4台、その奥にもう1台の、合計5台分の駐車スペースが描かれています。お父様と子世帯それぞれが車を使う場合や、来客が車で訪れる場合にも対応しやすい台数です。
駐車スペースのすぐ北側が玄関なので、車から玄関までの距離は短く、雨の日の乗り降りや買い物の荷物運びの負担が少なくなります。年齢を重ねて歩く距離を短くしたい場合にも、車と玄関の近さは暮らしやすさに直結します。
ただし、奥の5台目は手前の車の後ろに縦に並ぶ配置に見えるため、出し入れの際には手前の車を動かす必要があると考えられます。日常的に使う車と、使用頻度の低い車や来客用の枠を分けて考えておくと安心です。
注意点・デメリット
浴室がお父様の部屋から遠い
トイレはお父様の部屋の隣にありますが、浴室と洗濯・脱衣室は建物の東側にあります。お父様が入浴するときはLDKを通って東側まで移動することになり、子世帯の寝室に近い場所を使う形です。入浴の時間帯が重なる場合や、夜遅くに入浴する習慣がある場合は、使い方を家族で話し合っておく必要があります。
玄関とトイレの音が部屋に伝わりやすい
お父様の部屋は玄関とトイレに近いため、家族の出入りやトイレの給排水音が聞こえやすい位置です。壁に遮音材を入れる、トイレの排水管を部屋側の壁に通さない、玄関ドアの開閉音を抑える金物を選ぶなど、仕様面での配慮が必要です。
5.5帖の部屋は介護期にはやや手狭
5.5帖はベッドと椅子を置いて一人で暮らすには十分ですが、将来、介護用ベッドを入れてベッドの両側に介助のスペースを取る場合には余裕が少なくなります。建具を引き戸にしておく、廊下側に開口を広げられるようにしておくなど、将来を見越した準備をしておくと安心です。
L字型は外壁と屋根が増えやすい
同じ36坪でも、シンプルな長方形に比べるとL字型は外壁の長さや屋根の取り合いが増え、建築費が上がる場合があります。建物の幅も約14.56mあるため、駐車スペースを含めて敷地にある程度の間口が必要です。
庭の南側は隣地との関係次第
庭は北・東・西の三方を囲っていますが、南側は開いています。南側の隣地に建物が建つ場合や、隣地から見下ろされる高低差がある場合は、植栽やフェンスで南側の視線も調整する必要があります。
別の配置にした場合の考え方
お父様の部屋を庭側に置く案
お父様の部屋を東側の棟に移し、庭やデッキに面させる案も考えられます。日当たりや庭の眺めは良くなりますが、玄関までLDKを通って移動することになり、「気兼ねなく外出できる」という今回の考え方とは逆になります。浴室には近くなる一方、子世帯の個室と隣り合うため、音の配慮も必要になります。
お父様の部屋の近くに洗面やシャワーを追加する案
浴室までの距離が気になる場合は、お父様の部屋の近くに小さな洗面やシャワールームを追加する方法があります。日常の身支度を西側だけで済ませられるようになりますが、設備費が増え、その分ほかの収納や部屋の面積を減らす必要があります。
玄関を二つに分ける案
生活時間が大きく異なる場合や、来客が多い場合は、世帯ごとに玄関を分ける案もあります。独立性は高まりますが、玄関まわりの面積と費用が増え、今回のような「帰宅時に自然と気配を感じる」関係はつくりにくくなります。どこまで分けて、どこを共有するかは、ご家族の関係性によって答えが変わる部分です。
この間取りが合う方
- 親との同居を平屋で考えている方
- 玄関やLDKは共有しつつ、寝室まわりは離したい方
- 親が自分のペースで外出・帰宅できるようにしたい方
- 道路から見えにくい庭やデッキがほしい方
- 室内干しや乾燥機を使い、洗濯を室内で完結させたい方
- 複数台の車を敷地内に停めたい方
この間取りが合わない可能性がある方
- 浴室や洗面も世帯ごとに完全に分けたい方
- 親の部屋を日当たりや庭の眺めを最優先に配置したい方
- 建築費を抑えるため、建物の形をできるだけ単純にしたい方
- 間口の狭い敷地で計画している方
まとめ
今回の住まいは、97坪・西道路の敷地に計画した、延床36.0坪の4LDKの平屋です。北側の棟と東側の棟でL字をつくり、駐車スペース側を木塀で仕切ることで、LDKの南側に道路から見えにくい庭とウッドデッキを設けています。
お父様の部屋は玄関の横に置き、隣に約1.3帖のトイレを設けて、LDKを通らずに外出・帰宅できるようにしました。子世帯の主寝室・WIC・洋室2室はLDKをはさんだ東側にまとめ、トイレと洗面台をもう一組用意することで、朝夕の動きが重なりにくい構成としています。
一方で、浴室がお父様の部屋から遠いこと、玄関やトイレの音への配慮、L字型による建築費の増加といった注意点もあります。二世帯の同居では、何を共有し、どこで距離を取るかの答えはご家族ごとに異なります。部屋の数だけでなく、毎日の「通り道」を図面の上でたどってみることが、心地よい距離感を見つける近道です。
※本記事は一つの設計例です。敷地条件、法規、構造、周辺環境、家族の暮らし方により適切な計画は異なります。
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