
南道路の土地で平屋を計画すると、玄関も駐車場も庭も、すべて建物の南側に集まりがちです。日当たりは良いのに、LDKの窓の外には車が並び、道路を歩く人の視線も気になる。結果として、庭に面した窓のカーテンを一日中閉めて過ごすことになる、というのはよくある悩みです。
今回ご紹介するのは、南道路に面した敷地74坪に計画した、延床30.25坪・3LDKの平屋です。建物の南側中央に玄関を張り出させ、その張り出しを境に、西側を庭、東側を駐車スペースに分けました。LDKはリビング8帖とダイニングキッチン13.5帖に分け、リビングは壁で少し囲んだ「こもれる」場所にしています。
この記事では、玄関の張り出しが外まわりで果たしている役割、LDKをあえて2つに分けた理由、北側にまとめた水廻りと収納の動線、そしてこの配置と引き換えになっている点まで解説します。
この間取りの前提条件
- 敷地面積:74坪
- 道路:南道路
- 階数:平屋
- 間取り:3LDK
- 延床面積:30.25坪
- 建物の間口:11,830mm
- リビング:8帖(西側)、ダイニングキッチン:13.5帖(中央)
- 主寝室:6帖(北東)、洋室:4.5帖×2室(東側)
- WIC:3.75帖、パントリー:1.25帖、シューズクローク:2.5帖
- 水廻り:浴室1616サイズ、洗濯・脱衣室2帖、洗面室2.25帖、トイレ1.5帖
- 外部:リビング南側にタイルデッキと庭、駐車スペース3台
個室は6帖と4.5帖×2で、各洋室には机とベッドが描かれていることから、夫婦と子ども2人程度の家族を当てはめやすい構成です。リビングとダイニングキッチンを合わせると21.5帖あり、30坪の平屋としてはLDKに比較的ゆとりを持たせています。
敷地と配置の考え方
敷地は北側と南側の境界がやや斜めに振れた台形に近い形で、南側が道路に面しています。建物は北側に寄せ、北側の一列に水廻り・WIC・主寝室、東側に洋室2室、西側から中央にリビングとダイニングキッチンを配置しました。そして、建物の南側中央から玄関とシューズクロークの部分を道路側へ張り出させています。
駐車スペースは、張り出した玄関の東側に縦2台、南西の道路沿いに1台の計3台です。玄関へのアプローチは、南西の駐車スペースと東側の駐車スペースの間を、道路から北へ進む飛び石として描かれています。
リビングの南側にはタイルデッキがあり、その南に植栽のある庭が続きます。庭と南西の駐車スペースの間には塀が設けられ、庭の東側は玄関の張り出しの壁が受け止めます。つまり庭は、北をリビング、東を玄関の張り出し、南を塀に囲まれた、道路からも駐車場からも見えにくい場所になっています。
玄関の張り出しが持つ3つの役割
1.庭と駐車場を建物で分ける
玄関の張り出しがない場合、建物の南側は庭と駐車場がひと続きの空間になり、庭の隣に車が並ぶことになります。張り出しを設けることで、その壁自体が庭と東側の駐車スペースを隔てる「塀」の役割を果たします。外構のためだけに長い塀を立てなくても、建物の一部で庭の境界をつくれるのがこの配置の利点です。
2.玄関を駐車場側から入る向きにする
玄関ドアは張り出しの東寄りにあるポーチの奥に設けられ、土間へは東側から入る向きです。ポーチは南側のアプローチに向かって開いており、東側の駐車スペースからは張り出しの南端を回り込むだけでたどり着けます。車を降りてから玄関までが近く、雨の日の荷物の出し入れも短い距離で済みます。また、玄関ドアが庭の側を向いていないので、来客が玄関を訪れても庭でくつろいでいる様子が目に入りません。
3.シューズクロークを道路側に置く
張り出し部分には、玄関の土間とホールに加えて、2.5帖のシューズクローク(SC)が入っています。土間からシューズクロークへ直接出入りでき、北と南の両側に棚が描かれています。ベビーカーやアウトドア用品、子どもの外遊びの道具など、外で使う物を家に上げずにしまえます。
道路側へ張り出しているのは玄関・ホール・シューズクロークだけで、居室は道路から離れた位置に収まっています。長く過ごす部屋を道路側に出さず、通過する場所と収納を前に出すことで、道路と暮らしの場との間に距離をつくっているのがポイントです。
リビング8帖|壁で少し囲む「こもれる」居場所
リビングは建物の西側にあり、北西の角にL型のソファ、東側の壁にテレビボードが描かれています。このテレビボードの壁がダイニングキッチンとの間を仕切っていて、リビングとダイニングキッチンは南側の開口部でつながる形です。
LDKをひと続きの大空間にすると、ソファに座ったときにキッチンや玄関の出入りが目に入り、落ち着かないと感じる方もいます。このプランでは、テレビボードの壁によってキッチン側からの視線を適度に区切りながら、南側でつながりを残しています。完全な個室ではないので家族の気配は感じられ、それでいてソファに座ると囲まれた安心感がある。そんな距離感を狙った配置です。
リビングの南側はタイルデッキに面し、西側にも窓があります。リビングから見えるのは塀と玄関の張り出しに囲まれた庭だけなので、日中もカーテンを開けて過ごしやすくなります。開放感は窓の大きさだけでなく、窓の先に何が見えるかで決まる、という考え方です。
ダイニングキッチン13.5帖
ダイニングキッチンは建物の中央にあり、北寄りにシンクとコンロを並べた対面キッチン、南寄りに4人掛けの丸テーブルが描かれています。キッチンの背面にはカップボード(CB)と収納、東端に冷蔵庫置場(R)を備えたパントリー(1.25帖)があります。冷蔵庫をパントリーの中に置くことで、ダイニング側から家電が見えにくくなっています。
ダイニングの南側の壁際には棚が設けられ、その東隣、トイレの手前の一角には椅子を置いたデスクカウンターがあります。ダイニングの延長で、家計簿や子どもの勉強、パソコン作業ができる小さな書斎コーナーです。キッチンからも目が届く位置なので、子どもの様子を見守りながら家事を進められます。
ダイニングの西側の窓はタイルデッキに面しています。食事をしながら庭の様子が見え、天気の良い日はデッキに出て食事やお茶を楽しむこともできます。
北側にまとめた水廻りとWICの回遊動線
建物の北側には、西から浴室(1616サイズ)、洗濯・脱衣室(2帖)、洗面室(2.25帖)、WIC(3.75帖)、主寝室(6帖)が一列に並んでいます。洗濯・脱衣室には洗濯機置場とカウンター、洗面室には北側の壁に沿った洗面カウンターがあります。脱衣室と洗面室を分けているので、入浴中でもほかの家族が洗面を使えます。
WICは西側で洗面室に、東側で主寝室につながる通り抜け型で、南北の両方の壁にハンガーパイプが描かれています。洗濯機から取り出して干した衣類を、洗面室を抜けてそのままWICへ掛けられ、主寝室で寝起きする人はWICで着替えてから洗面室へ向かえます。「洗う → 干す → しまう → 着替える」が北側の一列で完結する配置です。
洗面室はダイニングキッチンとも直接つながっているため、ダイニングキッチン → 洗面室 → WIC → 主寝室 → 東側の廊下 → ダイニングキッチンと一周できます。料理の合間に洗濯機を回す、といった家事の並行がしやすい動線です。
東側の個室|机とベッドを置いた4.5帖×2
ダイニングキッチンの東側には南北に廊下が通り、その東に4.5帖の洋室が2室並びます。各室には東向きの窓、壁沿いのクローゼット、机とベッドが描かれており、扉は廊下に面して隣り合う位置にあります。廊下の南端には手洗い付きのトイレ(1.5帖)があり、ダイニングキッチン側には扉付きの収納も設けられています。
洋室の窓は東側の隣地に向いており、南側の洋室は外壁を挟んで東側の駐車スペースに接しています。車の出入りの音やエンジン音が伝わりやすい位置なので、窓の配置や壁の仕様、カーテンの選び方を検討しておくと安心です。一方で、道路からは距離があるため、通行人の視線は届きにくい位置です。
4.5帖に机とベッド、クローゼットを収めると、床の余白は多くありません。図面では机を部屋の西側の壁際、ベッドを東側の窓際に置いており、家具の配置まで確認したうえでの広さ設定であることが分かります。
注意点・弱点
ダイニングキッチンの南側は玄関でふさがる
玄関を南側に張り出した分、ダイニングキッチンの南側には玄関ホールとシューズクロークが並びます。南道路の土地でありながら、ダイニングキッチンへの光は主に西側のタイルデッキ側の窓から入る形です。キッチンは建物の奥にあたるため、日中の明るさを補う窓や照明の計画が重要になります。
リビングの西側の窓と夏の西日
リビングは西側にも窓があるため、夏の午後は西日が入りやすくなります。窓の大きさを抑える、外付けのシェードや植栽で日射をさえぎるなど、西日への対策を考えておきたいところです。
回遊動線が主寝室を通る
一周できる動線の途中に主寝室が含まれるため、家族が日常的にWICから主寝室を通り抜けるような使い方をすると、寝室のプライバシーが保ちにくくなります。WICを家族共用にするのか、夫婦専用にするのか、使い方のルールを決めておくと暮らしやすくなります。
トイレは1か所
このプランのトイレは、東側の廊下の南端にある1か所です。4人家族では朝の時間帯に重なる可能性があります。2か所目を設けたい場合は、洗面室の近くなど、どの収納を減らして場所をつくるかを検討する必要があります。
同じ74坪の土地で描いた別案
同じ74坪・南道路の土地で、建物をL字型にした別案も描いています。L字型で庭を先につくる平屋31.5坪のプランでは、北側の棟にLDK、東側に伸ばした棟に個室を置き、L字の内側にタイルデッキの庭を囲い込んでいます。駐車スペースは道路沿いに3台を横一列に並べ、玄関は建物の西側です。
L字案は建物で庭を「囲む」考え方、今回のプランは玄関の張り出しで庭と駐車場を「区切る」考え方です。L字案では個室が道路側に出るのに対し、今回のプランでは道路側に出るのは玄関と収納だけで、個室は東側と北側に収まっています。その代わり、今回のプランはダイニングキッチンの南側が玄関でふさがります。どちらを優先するかで、合うプランは変わってきます。
この間取りが向いている方
- 分譲地など、大きすぎない敷地で平屋を検討している方
- 駐車3台と、車が見えない庭の両方を確保したい方
- LDKをひと続きにしすぎず、落ち着けるリビングがほしい方
- 洗濯から収納、着替えまでを北側の一列で済ませたい方
- 外で使う物をしまえるシューズクロークがほしい方
反対に、ダイニングキッチンにも南からの光をたっぷり入れたい方や、トイレを2か所確保したい方、LDKを一つの大空間として見渡したい方には、別の配置の方が合う可能性があります。
まとめ
敷地74坪・南道路の土地に、延床30.25坪の平屋を計画しました。建物の南側中央に玄関とシューズクロークを張り出し、その壁を境に、西側を塀に囲まれた庭、東側を駐車スペースに分けています。リビングからは庭だけが見え、道路や車を意識せずにカーテンを開けて過ごせる配置です。
室内は、テレビボードの壁で少し囲んだリビング8帖と、デスクコーナーのあるダイニングキッチン13.5帖に分け、北側には水廻り・WIC・主寝室を一列に並べて回遊できる動線をつくりました。一方で、ダイニングキッチンの南側の採光、リビングの西日、主寝室を通る回遊、トイレが1か所であることといった引き換えもあります。限られた敷地の中で、庭・駐車場・視線をどう整理するかを考える参考になれば幸いです。
※本記事は一つの設計例です。敷地条件、法規、構造、周辺環境、家族の暮らし方により適切な計画は異なります。
コメント
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[…] 同じ74坪・南道路の土地で、建物の形を変えた別案も描いています。玄関を前に張り出して庭と駐車場を分けるプランでは、L字ではなく玄関部分を南へ突き出すことで、西側の庭と東側の駐車スペースを建物で分けています。駐車3台の並べ方も、こちらは横一列、別案は南西に1台と南東に2台と異なります。 […]