【2階建て36.5坪・3LDK】玄関土間の薪ストーブと吹き抜けリビング|南の日差しと北の牧草畑・山並みを両方取り込む家

2階建て3LDKの配置図兼1階平面図・2階平面図・南立面図・断面図。南西の玄関土間に薪ストーブ、北側にキッチンと2帖の書斎、東側に水廻りと6帖の主寝室、西側に4台分の駐車場、2階に6帖の洋室2室と吹き抜け
目次

はじめに

南道路の敷地では、多くの場合「南に向けてLDKを開く」ことが計画の出発点になります。ところが今回の敷地は、北側に牧草畑が広がり、その先に山並みを望める場所でした。日当たりは南から、景色は北から。光と眺めの方向が正反対という条件です。

もう一つのテーマが薪ストーブです。リビングの中央に置く計画が一般的ですが、本計画では玄関土間に設置しました。家に入った瞬間に火の気配があり、土間からLDK、吹き抜けへと暖かさと視線がつながる構成です。

この記事では、なぜ薪ストーブを玄関土間に置いたのか、北の眺望を書斎でどう受け止めているのか、1階で暮らしが完結する構成と2階のコンパクトな個室のバランスを解説します。あわせて、薪ストーブと吹き抜けを組み合わせる際に気をつけたい点や、ほかの配置との比較も整理します。

この間取りの前提条件

  • 階数:2階建て(2階は屋根勾配の中に収めた構成)
  • 間取り:3LDK+書斎
  • 延床面積:120.90㎡(約36.5坪)/1階86.12㎡・2階34.78㎡
  • 敷地面積:85坪
  • 道路:南道路
  • 周辺環境:北側に牧草畑、その先に山並み
  • 建物の外形:間口10,920mm×奥行9,100mm(1階)
  • 駐車:建物の西側に4台分
  • 主な特徴:玄関土間の薪ストーブ、リビング上部の吹き抜け、北向きの書斎、1階主寝室

延床36.5坪のうち、1階が約26坪、2階が約10.5坪です。2階は子ども部屋2室とトイレ、ホールだけに絞り、LDK・水廻り・主寝室・収納・書斎といった日々の生活に必要な機能はすべて1階に置いています。2階の面積を小さく抑えることで、外観は大きな切妻屋根の1.5階建てのような佇まいになっています。

敷地と建物配置の考え方

図面では、敷地の西側に4台分の駐車スペースをまとめ、その東側に建物を置いています。南側は道路に面し、建物と道路のあいだに庭とウッドデッキを確保しました。東側の敷地境界は斜めに振れた不整形で、その角にあたる南東部分には、点線で囲った屋外スペースが描かれています。

駐車場を西側に集約したのは、車の出し入れのための舗装面を一か所にまとめ、建物の南側を庭として使える幅に残すためです。仮に駐車場を建物の南側に並べると、LDKの窓の前が車で埋まり、庭やデッキの奥行きはほとんど取れません。西に寄せることで、道路からデッキ、LDKへと段階的に奥へ入っていく構成ができています。

玄関は建物の南西角にあり、駐車場から最も近い位置です。道路からは飛び石のアプローチが斜めに上がり、植栽のあいだを抜けてデッキに至ります。アプローチの東側には植栽帯を道路沿いに連ね、庭の中に屋外用の椅子とテーブルが置かれています。道路との間に植栽を挟むことで、南道路でもデッキや庭を使いやすくする意図が見えます。

玄関土間に薪ストーブを置いた理由

玄関土間は建物の南西角、幅1,820mmの帯の中にあります。薪ストーブは土間の西側の壁際に置かれ、玄関ドアから入ってすぐ左手に火が見える位置です。土間の東側は框を挟んでリビングと接しており、壁や建具で仕切る描き方にはなっていません。

土間に置くことの利点は、まず床の仕上げです。薪ストーブの周囲には、炉台や不燃材による床・壁の保護が必要になります。もともとモルタルやタイルで仕上げる土間であれば、炉台を兼ねやすく、薪の木くずや灰がこぼれても掃除がしやすくなります。断面図でも、土間は居室の床より一段低く描かれ、ストーブはその低い床面に据えられています。

次に動線です。薪は屋外から運び込むものなので、玄関の近くにストーブがあれば、靴のまま薪を運び、靴のまま火の世話ができます。リビングの中央に置いた場合は、薪を抱えて室内を横切ることになり、床に木くずが落ちやすくなります。

そして、寒い季節の帰宅時に、玄関がいちばん冷える場所ではなく、いちばん暖かい場所になることです。土間はリビングと段差だけでつながっているので、ストーブの熱と炎の明かりはリビング側にも伝わります。土間を、ストーブを眺めながら腰掛けたり、外遊びの道具を手入れしたりする居場所として使うこともできます。

土間まわりの収納

土間の西側にはストーブの北隣に物入れがあり、リビング側との境にはシューズボックス(図面上の「SB」)が置かれています。さらに土間の北側の扉を抜けると、土間床のまま続くスペースと、壁沿いにL字の棚を設けた収納スペースがあり、その先はキッチンの冷蔵庫脇へとつながる形に描かれています。

この並びであれば、買い物袋や外で使う道具、当日使う分の薪といった「家に持ち込む物」を、玄関から居室を通らずに奥へ運べます。来客は玄関からリビングへ、家族の荷物は土間から収納を経てキッチンへと、流れを分けて使えるのがこの帯状のゾーンの役割です。

リビングの吹き抜けと土間のつながり

LDKは幅5,460mmの中央の帯を中心に、北側にキッチン、その東にダイニング、南側にリビングを配置しています。図面から概算すると、LDKはおおよそ20帖を超える広さです。リビングの上部は吹き抜けで、2階平面図ではホールと階段に囲まれた位置に吹き抜けが描かれています。

リビングの南面には大きな掃き出し窓が並び、その外にデッキが続きます。南立面図を見ると、玄関ドアからLDKの窓の前まで下屋の屋根が架かり、デッキ全体を軒下として使える構成です。深い軒は、高度の高い夏の日射を遮りながら、高度の低い冬の日射は室内の奥まで取り込みやすい形でもあります。

階段はリビングの東側にあり、1階から上がって2階のホールに出るリビング階段です。2階の子ども部屋へ行くには必ずリビングを通るため、家族が顔を合わせる機会が自然に増えます。吹き抜けを介して1階と2階の声や気配も伝わります。

一方で、吹き抜けとリビング階段は、暖かい空気が上に逃げる経路にもなります。薪ストーブの熱は暖かい空気として上昇しやすいため、2階ホールや子ども部屋に熱が届くという見方もできますが、1階の床付近が冷えやすくなる面もあります。シーリングファンなどで上部の空気を下ろす計画とあわせて考えることが大切です。

北側のキッチンと書斎で眺望を受け止める

この住まいでは、北側の壁に面してキッチンの背面収納と冷蔵庫、そして2帖の書斎を並べています。キッチンは対面式で、調理をする人は北の壁を背にして南のリビングとデッキの方向を向きます。背面のカップボードの上部には窓が描かれ、北側の景色と安定した光を取り込める配置です。

書斎はダイニングの北東、浴室との間にあり、北側の窓に向かってデスクと椅子が置かれています。北側の窓は直射日光が入りにくく、一日を通して明るさの変化が小さいため、パソコン作業や読書の画面・紙面がまぶしくなりにくいのが利点です。窓の外には牧草畑と山並みが広がるため、作業の合間に遠くへ視線を向けられる場所になっています。

南道路の敷地で北側に眺望がある場合、LDK全体を北向きにすると冬の日射が取り込みにくくなります。本計画のように、LDKの主な窓は南に向けて日射を確保し、長い時間座って過ごす書斎とキッチンの窓を北に振り分けることで、日当たりと眺望を両方取り込んでいます。

ただし書斎は2帖と小さく、デスクを一台置く程度の広さです。ダイニングに近く家族の気配を感じながら作業できる一方、オンライン会議などで音を遮りたい場合は、扉の仕様や位置を確認しておく必要があります。

東側にまとめた水廻りと1階の主寝室

建物の東側の帯には、北から浴室(1616サイズのユニットバス)、洗面、約3帖のランドリー、約2帖のウォークインクローゼット、トイレが並び、南東の角に6帖の主寝室があります。洗面台は浴室・ランドリーとは別に、廊下側から使える独立した位置に設けられています。

ランドリーには洗濯機と、東側の壁に沿ったカウンターが描かれ、洗う・干す・畳むを一室で行える計画です。その南側にウォークインクローゼット、さらに主寝室が続くため、洗濯物を畳んでから収納するまでの移動が短くなります。洗面台を独立させたことで、誰かが入浴・洗濯中でも、ほかの家族が手洗いや歯磨きをしやすくなっています。

主寝室・水廻り・収納・トイレが1階にそろっているため、日常生活は1階だけで完結します。子どもが独立した後や、将来階段の上り下りが負担になった場合でも、暮らし方を大きく変えずに済む構成です。主寝室は南面に窓があり、LDKとは階段・トイレの帯を挟んで離れているため、リビングの音も届きにくくなっています。

2階は屋根の中に収めた子ども部屋

2階は奥行き6,370mmの範囲に、東西の両端に6帖の洋室を1室ずつ、その間にホール、吹き抜け、階段、トイレを配置しています。断面図を見ると、主屋根は10寸(45度)の急勾配で、2階はその屋根の中に収まる形です。2階の各洋室には「天井下がり」の表記があり、屋根の傾斜に沿って天井が低くなる部分があります。

屋根の中に2階を収めると、総2階に比べて外観の高さを抑えやすく、建物の印象が穏やかになります。牧草畑や山並みが広がる環境の中で、建物が周囲から突出しすぎない佇まいになるのもこの形の良さです。各洋室は東西の妻側の壁に窓を設けられるため、屋根の傾斜があっても採光と通風を確保しやすくなっています。

2つの洋室は吹き抜けとホールを挟んで東西に離れているため、隣り合う配置に比べて互いの生活音が伝わりにくくなります。2階にもトイレがあるので、夜間に子どもが1階へ下りる必要もありません。

注意点・デメリット

玄関ドアの開閉で冷気が入りやすい

土間とリビングを建具で仕切らない構成では、玄関ドアを開けたときの外気がリビングまで届きやすくなります。ストーブを焚いていない時間帯や、ストーブを使わない季節の冷暖房も含め、断熱・気密性能や玄関ドアの性能を高めておくことが前提です。必要に応じて、土間とリビングの境に引き戸やカーテンを設けられるよう、下地や枠を準備しておく方法もあります。

ストーブから遠い部屋は暖まりにくい

ストーブは南西角の土間にあり、南東角の主寝室や北東の水廻りとは建物の反対側になります。薪ストーブ一台で家全体を均一に暖めることは難しいため、寝室や脱衣室には別の暖房を用意しておくと安心です。

薪の保管と運搬の距離

薪ストーブを使うには、一冬分の薪を雨に濡らさず乾燥させておく場所が必要です。図面に薪棚の位置は明示されていないため、玄関に近い西側の軒下や駐車場の脇など、運び込みやすく風通しのよい場所を外構計画の段階で決めておく必要があります。

火を扱う設備としての安全配慮

玄関は人の出入りが多く、上着や靴、傘などが集まる場所です。ストーブ本体と可燃物との離隔、炉台・壁の不燃処理、小さな子どもがいる場合のガードなどは、機種ごとの基準に合わせて確認します。煙突は屋根を貫通するため、雨仕舞いや、煙突掃除のための点検方法も設計段階で検討が必要です。

2階の洋室は天井の低い部分がある

屋根の傾斜に沿って天井が下がるため、背の高い家具を置ける壁は限られます。ベッドや机の配置を、天井の高さを含めて検討しておくことが大切です。また、屋根に近い部屋は夏に暑くなりやすいため、屋根の断熱と換気の計画も重要になります。

北側の眺望は将来変わる可能性がある

牧草畑は農地であり、将来の土地利用によって景色が変わる可能性はゼロではありません。眺望を設計の軸にする場合は、周辺の土地の用途地域や農地の扱いを事前に確認しておくと安心です。

ほかの配置との比較

薪ストーブをリビングの中央に置く場合

仮にストーブを吹き抜けの下、リビングの中央に置くと、LDK全体に熱が届きやすく、家族が火を囲む場面もつくりやすくなります。一方で、ストーブまわりに炉台と離隔のための面積が必要になり、ソファやテーブルの配置が制約されます。薪を運ぶ動線もリビングを横切ることになるため、土間に置く案は、暖房の効率よりも薪の扱いやすさと玄関の暖かさを優先した選択といえます。

LDKを北向きに開く場合

眺望を最優先に考えて、リビングの大きな窓を北側に向ける案も考えられます。景色は正面に来ますが、冬の日射が入りにくくなり、南側の庭やデッキとのつながりも弱くなります。本計画は、景色を眺める時間の長い書斎とキッチンだけを北に向け、LDKは南に開くという振り分けをしています。

書斎を2階に設ける場合

2階の北側ホールに書斎を設ければ、1階より高い位置から景色を見下ろせ、生活音からも離れられます。ただし、2階の床面積が増えるうえ、屋根の傾斜で北側は天井が低くなります。1階のダイニング脇に置いた本計画は、家族の気配を感じながら作業でき、家事の合間にも使いやすい位置です。

この間取りが合う方

  • 薪ストーブを、薪の準備や手入れも含めて楽しみたい方
  • 玄関土間を、靴のまま過ごせる居場所として使いたい方
  • 南の日当たりと北の眺望を両方取り込みたい方
  • 在宅ワークや読書のための小さな書斎がほしい方
  • 寝室・水廻り・収納を1階にまとめ、将来も1階中心で暮らしたい方
  • 2階は子ども部屋だけでよく、建物の高さを抑えたい方
  • 駐車台数を多く確保したい郊外の敷地を検討している方

この間取りが合わない可能性がある方

  • 薪の調達・保管・灰の処理などの手間を減らしたい方
  • 玄関とリビングを建具でしっかり仕切りたい方
  • 吹き抜けよりも冷暖房の効率を優先したい方
  • 子ども部屋に天井の高さや家具の自由度を求める方
  • 2帖より広い書斎や、防音性の高い仕事部屋が必要な方

まとめ

本計画は、85坪の南道路の敷地に建てる延床約36.5坪の2階建て3LDKです。西側に4台分の駐車場をまとめ、南側に庭とデッキを確保し、北側の牧草畑と山並みを書斎とキッチンの窓から眺める配置としました。

薪ストーブは、リビングではなく玄関土間に置いています。土間の床が炉台を兼ね、薪を靴のまま運べ、帰宅した瞬間に暖かさを感じられる位置です。土間はリビングと段差だけでつながり、リビング上部の吹き抜けによって、火の気配が家の中心へ広がります。

一方で、玄関からの冷気、ストーブから遠い部屋の暖房、薪の保管場所、2階の天井の低さといった課題もあります。光は南から、景色は北から、暖かさは玄関から。それぞれの方向と役割を整理しながら、季節を感じて暮らせるように計画した住まいです。

※本記事は一つの設計例です。敷地条件、法規、構造、周辺環境、家族の暮らし方、設置する薪ストーブの機種などにより適切な計画は異なります。

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