
はじめに
140坪という広い敷地は、平屋を計画するには恵まれた条件です。一方で、面積に余裕があるほど「広いLDKをつくって終わり」になりやすく、家族が同じ大空間にいるだけで、それぞれが落ち着ける場所が意外と少ない、ということも起こります。
本計画は、西側で道路に接する140坪の敷地に、延床31.87坪の平屋3LDKを配置した提案です。19帖のLDKを東西に長く取り、その周りに1.5帖のヌック、寝室と続く2.5帖の畳の書斎、玄関ホールから見える植栽スペースといった、小さな居場所を重ねています。
この記事では、敷地の使い方、東西に長いLDKの組み立て方、ヌックと書斎の役割、主寝室・WIC・ランドリーが連続する家事動線を解説します。あわせて、建物を東西に長くしたことで生じる弱点や、ほかの配置との比較も整理します。
この間取りの前提条件
- 階数:平屋
- 間取り:3LDK+書斎+ヌック
- 延床面積:105.58㎡(31.87坪)
- 敷地面積:140坪
- 道路:西側の位置指定道路に接道(道路との高低差あり、土留めの方法は要検討)
- 建物の外形:東西の間口13,650mm
- 駐車:西側に6台分
- LDK:19帖(ヌック1.5帖が隣接)
- 主寝室:6帖(書斎2.5帖、WIC3.75帖が隣接)
- 洋室:5.5帖×2室(収納込み)
- 水廻り:ランドリー3.5帖、廊下兼洗面2帖、浴室1621サイズ、トイレ1.5帖
- 収納:パントリー2.5帖、シューズクローク2.5帖
図面には「道路との高低差要検討」とあり、ブロックによる土留めか法面(のりめん)にするかを比較する前提が書き込まれています。敷地が道路と同じ高さではないため、駐車場とアプローチの造成が計画の一部になる敷地です。
敷地と建物配置の考え方
建物は敷地の北側に寄せ、東西に長い長方形を基本に配置しています。西側の道路沿いには駐車場をまとめ、建物の西面に沿って3台、その南側に3台、合わせて6台分が描かれています。建物の南側は大きく空けられ、図面上の寸法では東西約15m、南北約11mの庭が確保されています。
北に寄せて東西に長く建てると、南面の長さが最大になり、LDKも個室も南からの光を受けやすくなります。北側に余白を残さない分、南の庭をまとまった広さで使えるのもこの配置の利点です。仮に建物を敷地の中央に置くと、北側にも中途半端な空地が生まれ、南の庭は狭くなります。
駐車場を道路側の西にまとめたことで、車の出入りと庭がはっきり分かれます。子どもが庭で遊んでいるときに車が横切らない配置であり、玄関も駐車場に面した南西側に置かれているため、雨の日の乗り降りから玄関までの距離も短くなっています。
玄関ホールから見える植栽スペース
玄関は建物の南西部にあり、駐車場側のポーチから入ります。玄関の北側には2.5帖のシューズクロークが続き、玄関とホールの境の框は斜めに振った形で描かれています。框を斜めにすると、土間とホールの面積配分を調整しながら、ホールに上がった先の向きを自然にLDK方向へ誘導できます。
ホールの東側には、建物の凹みを利用した植栽スペース(中庭)があります。LDKの南西角に食い込む位置で、ホールからは正面にこの緑が見え、LDKのデッキ側からも同じ植栽を眺められます。玄関に入ってすぐの場所に外の緑が見えることで、通過するだけのホールに季節の変化が加わります。
この植栽スペースは南側の庭とつながる形で描かれており、四方を壁で囲む本格的な中庭ではありません。そのため、ホールやLDKの窓から見えるものを植栽で調整し、道路や駐車場からの視線をやわらげる「緩衝帯」として働く位置でもあります。
東西に長い19帖のLDK
LDKは建物の中央に東西に長く配置され、西からリビング、ダイニング、東端にキッチンと並びます。キッチンは南北方向に長いカウンターで、調理する人は西を向く形です。キッチンに立つと、ダイニング、リビング、その奥のヌックまでを一方向に見通せます。
東西に長いLDKでは、リビングとキッチンの間に距離が生まれます。調理中の音や匂いがリビングまで届きにくく、くつろぐ人と家事をする人が同じ空間にいながら、適度に離れて過ごせるのが利点です。キッチンの背面には東の壁沿いにカップボードがあり、北側には冷蔵庫と冷凍庫を収めた2.5帖のパントリーが続きます。
ダイニングからリビングにかけての天井は、図面上「折り上げ天井+化粧梁」と記されています。A-A’断面図を見ると、屋根は南に向かって下がる片流れで、南側の窓まわりには間接照明とカーテンボックスが描かれています。南の軒天は「水平軒天、リビング天井と高さをそろえる」との注記があり、室内の天井面がそのまま外の軒裏へ続いて見える計画です。天井と軒の高さがそろうと、窓の上端で視線が途切れにくく、南の庭への広がりを感じやすくなります。
リビングの西側の壁にはテレビを掛け、その下にバイオエタノール暖炉を組み込む計画が断面図に描かれています。煙突の要らない暖炉で、炎を眺める楽しみをリビングに取り入れる工夫です。南側にはリビングからダイニングにかけてウッドデッキが接しています。
リビングの北側にこもれる1.5帖のヌック
ヌックはリビングの北側、ウォークインクローゼットの南に接する位置にあります。広さは1.5帖で、床を一段上げ、奥の壁一面を本棚とするスケッチが添えられています。リビングに向かって開いているので、扉で閉じる個室ではなく、家族の気配が届く「くぼみ」のような場所です。
北側に置いたことにも意味があります。南の窓に面したリビングは明るい反面、日中はまぶしさもあります。北側のヌックは直射日光が入りにくく、本を読んだり横になったりするのに落ち着いた明るさになりやすい位置です。リビングのソファとは向きが異なるため、テレビを見ている家族と、ヌックで本を読む家族が互いに干渉しにくくなります。
1.5帖は、大人一人が座ったり、子どもが寝転んだりするのにちょうどよい大きさです。ただ、使い方を決めないままだと、洗濯物やおもちゃの一時置き場になりやすい広さでもあります。本棚とクッションを置く読書の場所、子どもの遊び場など、役割を先に決めておくことが大切です。
主寝室に続く2.5帖の畳の書斎
建物の西端には6帖の主寝室があり、その南側に2.5帖の書斎が続いています。スケッチでは、書斎の床の一部を一段上げた畳とし、窓に面して造り付けのデスク、壁に本棚を設けています。デスクで作業するだけでなく、畳に腰掛けたり、横になって休んだりもできる場所です。
書斎を寝室側に置くことで、LDKの生活音から距離を取り、在宅ワークやオンライン会議に集中しやすくなります。また、寝室と同じゾーンにあるため、夜に一人で読書をしたり、家族が寝た後に作業をしたりといった使い方にも向いています。
一方で、寝室とつながる書斎は、片方が寝ている時間に作業をするとデスクの明かりや物音が気になる場合があります。夫婦の就寝・起床時間がずれる家庭では、書斎と寝室の間に引き戸を設けるなど、仕切り方を検討しておくと安心です。
主寝室・WIC・ランドリーが連続する家事動線
建物の北側には、西から主寝室、3.75帖のウォークインクローゼット、3.5帖のランドリー、浴室が一列に並んでいます。ウォークインクローゼットは主寝室側とランドリー側の両方に出入口があり、寝室からランドリーへ通り抜けられる形です。ランドリーには洗濯機のほか、タオル収納と洗濯カゴの置き場が記されています。
この並びにより、洗う・干す・畳む・しまうがほぼ直線上で完結します。ランドリーで干して乾いた衣類を、隣のウォークインクローゼットへそのまま掛けられ、朝の着替えも寝室から数歩で済みます。ランドリーの南側には2帖の廊下兼洗面とトイレがあり、洗面からLDKへも出られるため、寝室・WIC・ランドリー・洗面・LDKをぐるりと回る動線になっています。
洗面を廊下と兼用にしたのは、面積を抑えながら独立した洗面台を確保するためと考えられます。浴室とランドリーを使っている間も、ほかの家族が手洗いや歯磨きをしやすい配置です。ただし、廊下兼用であるため、身支度の時間帯には家族の通行と重なることも想定しておく必要があります。
東端の子ども部屋と主寝室の距離
5.5帖(収納込み)の洋室2室は、建物の東端に南北に並んでいます。主寝室は西端にあるため、親と子の寝室はLDKを挟んで建物の両端に分かれる配置です。子どもが成長してからは、互いの生活音や生活時間の違いを気にせずに過ごせます。
一方で、子どもが小さいうちは、夜中に親の寝室まで距離があることになります。乳幼児期は主寝室で一緒に寝る、子ども部屋の一室を当面は家族の寝室として使う、といった時期ごとの使い方を考えておくとよいでしょう。洋室の前の小さなホールはキッチンの北側とつながっており、キッチンからは子ども部屋の出入りの気配を感じやすい位置です。
注意点・デメリット
東西に長い平屋は移動距離が長くなる
間口13,650mmの建物の両端に寝室を分けているため、西の主寝室から東の子ども部屋や勝手口側までは距離があります。外壁の面積も増えやすく、同じ床面積の正方形に近い平屋と比べると、建築費や断熱上の熱の出入りに影響する場合があります。
道路との高低差の処理に費用がかかる
図面の注記のとおり、道路との高低差はブロック土留めか法面で処理する必要があります。土留めは敷地を有効に使える反面、費用がかかります。法面は費用を抑えやすい一方、斜面の分だけ平らに使える面積が減り、6台分の駐車スペースの取り方にも影響します。造成費を早い段階で見積もっておくことが重要です。
広い南庭は手入れの負担も大きい
約15m×11mの庭は、芝や植栽にすると草取りや芝刈りの手間が相応にかかります。デッキまわりだけを手入れしやすい仕上げにし、外周は管理の楽な植栽にするなど、手間のかけ方に強弱をつける計画が現実的です。
ランドリーとWICの湿気対策
ランドリーで室内干しをしながら、その隣のウォークインクローゼットに衣類を収める構成では、湿気が収納側へ流れ込まないようにする工夫が必要です。換気扇や除湿機の位置、扉を閉めて使うかどうかを含めて検討します。
暖炉を設ける場合の確認
バイオエタノール暖炉は煙突が不要ですが、火を使う器具であることに変わりはありません。製品ごとの設置条件や周囲の離隔、燃料の保管方法、使用時の換気について確認が必要です。主暖房ではなく、雰囲気を楽しむ補助的な器具として位置づけるのが一般的です。
ほかの配置との比較
L字型にして寝室ゾーンを南へ振る場合
仮に子ども部屋側を南へ折り曲げたL字型にすると、移動距離は短くなり、庭を建物で囲う形になります。一方で、南庭の一部が建物の影になり、LDKから見える庭の広がりは小さくなります。本計画は、移動距離よりも南面の長さと庭の大きさを優先した形といえます。
書斎をLDK側に設ける場合
書斎をヌックの位置に置けば、家族の様子を見ながら作業できます。ただし、テレビやキッチンの音が届きやすく、オンライン会議には向きにくくなります。本計画では、集中する場所を寝室側の書斎、くつろぐ場所をLDK側のヌックと分けています。
駐車台数を減らして庭や植栽を増やす場合
6台分の駐車スペースは、来客の多い家庭や車の台数が多い地域には心強い一方、常時使うのが2〜3台であれば、南側の3台分を植栽や家庭菜園に充てる選択肢もあります。舗装面が減れば、造成や外構の費用も調整しやすくなります。
この間取りが合う方
- 100坪を超える広い敷地で、30坪前後の平屋を検討している方
- 広いLDKだけでなく、こもれる小さな居場所もほしい方
- 在宅ワークの場所を寝室側に確保したい方
- 洗濯から収納までを短い動線で済ませたい方
- 親と子の寝室を離して、互いの時間を尊重したい方
- 車を複数台所有している、または来客用の駐車場が必要な方
- 南側の庭やデッキを暮らしの一部として使いたい方
この間取りが合わない可能性がある方
- 家の中の移動距離をできるだけ短くしたい方
- 小さな子どもと寝室を近くに配置したい方
- 扉で完全に区切られた個室の書斎が必要な方
- 庭の手入れに時間をかけたくない方
- 造成や外構の費用をできるだけ抑えたい方
まとめ
本計画は、西側で道路に接する140坪の敷地に建てる、延床31.87坪の平屋3LDKです。建物を北に寄せて東西に長く配置し、西に6台分の駐車場、南に約15m×11mの庭を確保しました。
19帖のLDKは、東のキッチンから西のリビングまで一方向に見通せる構成で、北側に1.5帖のヌック、西の主寝室には畳とデスクを備えた2.5帖の書斎を設けています。主寝室・WIC・ランドリー・洗面が連続し、家事動線も短くまとめました。
一方で、東西に長い分の移動距離、道路との高低差の処理、広い庭の手入れといった課題もあります。広い敷地だからこそ、ただ大きな空間をつくるのではなく、家族がそれぞれの時間を過ごせる小さな場所をどこに置くか。その配分を丁寧に整理した平屋です。
※本記事は一つの設計例です。敷地条件、法規、構造、周辺環境、家族の暮らし方により適切な計画は異なります。
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